コックカワサキの魂

魂は死んでないんじゃないの〜?

八方塞がり

 井の中の蛙大海を知らず

 という有名な言葉がある、ざっくり言うと狭い範囲では一番だと思っていても広い範囲ではそうとは限らないという意味である。

 

 中高の頃の私などまさにそうであった、将来のことを考えても自分には何かしら人にない特別な才能があると過信していた。普通のサラリーマンにならずとも特殊な仕事で食べていけると思っていた。なんならこの世にある仕事なら何にでもなれる可能性があるとさえ思い込んでいた。あの頃の私は無敵だった。

 

 しかし、年を経るにつれて自分を見る必要性が出てきた。自分が責任を取らなければならない場面が増えてきた。そんな場面が増えるにつれて、中高の頃私に開かれていた多くの道は通行止めになっていった。

 

 今となってはもう私に残された道は数本しかない、人とは違う特殊な生き方をする道はまだ少しばかり残っている。残ってはいるものの、昔はよく見ていなかったから気づかなかったが、その道は崖沿いにあった。現在の私にその危険を冒すほどの気力も勇気もなく、平坦で景色も一辺倒でつまらない皆が歩こうとしている道へ進み始めていた。

 

 もし人生を道を歩きき続ける行為であるとすれば、今ここでこうして次に歩く道を悩んでいることはそれこそ平坦でつまらない道を歩くことではないのだろうか。一体何人の人がこの道をこうやって歩いてきただろうか。人と違う道を歩きたいのに結局はこうやって人と同じ道を歩いている。

 

 もう少し先に分かれ道の看板が見える。おそらく私は安全な道を歩くことになるだろう、今いる道もそういう道なのだから。後ろを振り返ってもそういった道が続いている。崖に行く勇気はいまだに出ない。